学校推薦型選抜、総合型選抜とは?推薦入試の違いを解説
近年、大学入試の形態は大きく変わり、多様化が進んでいます。その中でも「推薦入試」は、従来の学力試験に依らない新しい選抜方式として注目を集めています。
推薦入試には「学校推薦型選抜(公募制)」、「学校推薦型選抜(指定校制)」、「総合型選抜(AO入試)」といった様々な形式があり、それぞれに独自の特徴と評価基準があります。このブログでは、これらの推薦入試の違いについて詳しく説明します。
推薦入試の多様化の背景

近年、社会や経済の変化に伴い、教育環境も大きく変わってきました。これにより、大学入試のあり方も見直され、多様化が進んでいます。特に以下の点が推薦入試の多様化に大きく影響しています。
- 多様な人材のニーズ
- グローバル化やITの進展により、社会は多様なスキルや価値観を持つ人材を求めています。大学も単なる学力だけではなく、様々なバックグラウンドや特技を持つ学生を求めるようになりました。
- これにより、学生の個性や能力を総合的に評価できる推薦入試が重要視されるようになっています。
- 高校教育の変革
- 高校教育も、知識の詰め込みから、思考力・判断力・表現力の育成へとシフトしています。これに伴い、大学入試でもこうした能力を評価する必要性が高まっています。
- 推薦入試や総合型選抜(AO入試)は、学力試験だけでは評価しきれない生徒の能力を把握するための手段として適しています。

特に大きな変化をもたらしたのが、文科省がすすめている高大接続改革です。
高大接続改革とは

高大接続改革は、日本の教育制度において、高校教育と大学教育の接続を円滑にし、学びの連続性を確保するために行われている一連の改革を指します。この改革は、社会の急速な変化に対応し、学生が主体的に学び、将来にわたって活躍できる力を養うことを目的としています。
背景
21世紀に入り、グローバル化や情報技術の進展に伴い、社会や経済の構造が大きく変化しています。これにより、従来の教育システムでは対応しきれない新しいスキルや知識が求められるようになりました。こうした背景から、高校教育と大学教育の質を向上させ、相互の接続を強化する必要性が高まってきました。
主要な取り組み
高大接続改革にはいくつかの主要な取り組みが含まれます。以下に代表的なものを紹介します。
- 大学入学共通テストの導入
- 従来の「大学入試センター試験」に代わり、2021年度から「大学入学共通テスト」が導入されました。このテストは、知識の記憶だけでなく、思考力、判断力、表現力を重視した問題構成になっており、高校での学びと大学での学びを有機的につなげることを目指しています。
- 高校教育の改革
- 高校教育の内容と方法を見直し、生徒が主体的に学び、探究する力を養うカリキュラムを導入しています。例えば、総合的な探究の時間や課題研究の充実が図られています。
- 大学教育の改革
- 大学教育でも、アクティブラーニングやPBL(問題解決型学習)などの導入が進められ、学生が主体的に学び、実践的なスキルを身につける教育が強化されています。
- 評価方法の多様化
- 推薦入試や総合型選抜(AO入試)の充実により、学力試験だけでなく、面接、小論文、課外活動の実績など、多様な評価基準を用いた選抜が行われるようになっています。
目的と期待される効果
高大接続改革の目的は、以下の通りです。
- 学びの連続性の確保
- 高校での学びを大学での学びにスムーズにつなげることで、学生が主体的に学び続ける力を育成する。
- 多様な能力の評価
- 学力試験だけでなく、思考力、判断力、表現力、さらには課外活動や特技など、多様な能力を評価することで、個々の学生の特性を生かした教育を推進する。
- 社会の変化に対応した人材育成
- グローバル化や技術革新が進む現代社会において、柔軟に対応できる人材を育成することを目指す。
高大接続改革は、未来の社会を担う学生たちが自ら考え、学び、行動する力を養うための重要な施策です。保護者としても、この改革の背景と目的を理解し、子どもたちの教育をサポートすることが求められます。
学校推薦型選抜(公募制)

学校推薦型選抜(公募制)は、特定の高校に限定されず、全国の高校から推薦を受けた生徒が出願可能な推薦入試方式です。この入試方式は、多様な学生を広く募集し、学力だけでなく個々の特性や適性を評価することを目的としています。
特徴
- 広い募集範囲
- 全国の高校から推薦を受けた生徒が対象です。特定の高校に限定されないため、多様な背景を持つ生徒が応募できます。
- 多様な評価基準
- 書類審査、面接、小論文、適性検査など、様々な方法で評価されます。これにより、学力試験だけでは測れない生徒の能力や個性を把握することができます。
- 学校推薦書が必要
- 出願には高校の推薦書が必要です。推薦書には生徒の学業成績、人物評価、課外活動の実績などが記載されます。
必要書類
学校推薦型選抜(公募制)に出願する際に必要な主な書類は以下の通りです。
- 学校推薦書
- 高校の校長や担当教師が作成します。生徒の学業成績や人柄、課外活動の実績などが評価されます。
- 調査書
- 高校の成績表や生活状況を記載した書類です。内申点や出席状況、課外活動の実績などが含まれます。
- 志望理由書
- 志望する大学や学部への意欲、将来の目標について記載します。自己PRや将来のビジョンを具体的に述べることが重要です。
- 成績証明書
- 高校での学業成績を証明する書類です。過去の成績を元に、学力を評価します。
- 小論文
- 指定されたテーマに沿って、自分の考えを論理的に表現する文章です。テーマは大学ごとに異なりますが、自己の意見を明確に伝えることが求められます。
- 面接
- 面接が課される場合があります。志望理由や将来の目標、自己PRなどについて質問されることが多いです。
評価方法
学校推薦型選抜(公募制)では、以下のような評価方法が一般的に用いられます。
- 書類審査
- 提出された推薦書、調査書、成績証明書、志望理由書、小論文などの書類を基に、学業成績や人物評価を行います。
- 面接
- 面接では、志望理由や将来の目標について質問されます。また、自己PRや高校生活での経験についても聞かれることがあります。
- 小論文
- 小論文の内容を基に、論理的思考力や表現力を評価します。自分の意見を明確に伝えることが重要です。
- 適性検査
- 大学によっては、適性検査が行われることがあります。これは学力以外の能力や適性を測るためのテストです。
学校推薦型選抜(公募制)は、広い範囲から多様な学生を受け入れることができる柔軟な入試方式です。保護者としては、子どもの特性や強みを理解し、この入試方式が適しているかどうかを見極めることが重要です。また、推薦書や志望理由書の作成をサポートし、面接対策を含む十分な準備を行うことが求められます。
学校推薦型選抜(指定校制)

学校推薦型選抜(指定校制)は、大学が指定した特定の高校から推薦を受けた生徒のみが出願できる推薦入試方式です。この入試方式は、大学と高校の信頼関係に基づいて実施され、特定の学校から一定の条件を満たした生徒を確実に受け入れることを目的としています。
特徴
- 限定された募集範囲
- 大学が指定した高校からのみ推薦を受けることができます。指定校推薦枠は、大学と高校の信頼関係に基づいて設定されます。
- 高い合格率
- 指定校推薦は合格率が高いことが多いです。推薦を受けた生徒は、その高校の中で選抜された優秀な生徒であるため、大学側も積極的に受け入れる傾向があります。
- 事前に内定が得られることが多い
- 推薦が確定した時点で、ほぼ合格が内定する場合が多く、早い段階で進学先が決まるため、受験の負担を軽減することができます。
必要書類
学校推薦型選抜(指定校制)に出願する際に必要な主な書類は以下の通りです。
- 学校推薦書
- 高校の校長や担当教師が作成し、推薦理由や生徒の学業成績、人物評価などが記載されます。
- 調査書
- 高校での成績表や生活状況を記載した書類です。内申点や出席状況、課外活動の実績などが含まれます。
- 成績証明書
- 高校での学業成績を証明する書類です。過去の成績を元に、学力を評価します。
- 志望理由書
- 志望する大学や学部への意欲、将来の目標について記載します。自己PRや将来のビジョンを具体的に述べることが重要です。
- 面接(大学による)
- 面接が課される場合もあります。志望理由や将来の目標、自己PRなどについて質問されることが多いです。
評価方法
学校推薦型選抜(指定校制)では、以下のような評価方法が一般的に用いられます。
- 書類審査
- 提出された推薦書、調査書、成績証明書、志望理由書などを基に、学業成績や人物評価を行います。
- 面接
- 一部の大学では面接が行われます。志望理由や将来の目標、自己PRなどについて質問されます。
メリットとデメリット
メリット
- 高い合格率
- 指定校推薦は合格率が非常に高く、進学が確実なものとして期待できます。
- 早期の進路決定
- 早い段階で進学先が決定するため、残りの高校生活を有意義に過ごせます。
- 受験の負担軽減
- 通常の受験勉強や複数の受験校を考える必要がなくなり、精神的・経済的な負担が軽減されます。
デメリット
- 進路の変更が難しい
- 一旦指定校推薦で合格が決まると、他の大学への進路変更が難しくなります。
- 学校内での競争
- 指定校推薦枠は限られているため、高校内での成績や評価が重要となり、競争が発生します。
- 多様な選択肢の制限
- 指定校推薦で進学先が決まると、他の選択肢を考える余地が少なくなるため、進路の幅が狭くなります。
学校推薦型選抜(指定校制)は、特定の高校から推薦を受けた生徒が、ほぼ確実に進学できるメリットを持つ入試方式です。保護者としては、子どもが指定校推薦を目指す場合、その高校での成績や活動実績をしっかりとサポートし、推薦枠を得るための準備を進めることが重要です。指定校推薦の制度を理解し、子どもに最適な進路を見つけるための一助となるよう、しっかりと情報収集と準備を行いましょう。

医学部は指定校制でも、それなりの倍率があります。ほぼ確実に進学できるというメリットはないので、注意が必要です。
総合型選抜(AO入試)

総合型選抜(AO入試)は、学力試験だけでなく、学生の多様な能力や適性を総合的に評価する入試方式です。この入試方式は、学生の学力に加え、個性、志望動機、将来のビジョンなど、様々な側面を総合的に判断し、大学にふさわしい人材を選抜することを目的としています。
特徴
- 多様な評価基準
- 学力試験に依らず、書類審査、面接、小論文、プレゼンテーション、グループディスカッションなど、多様な方法で評価します。
- 学生の主体性重視
- 自分の将来像や大学での学びに対する強い意欲、独自の経験や活動実績などを重視します。学生が主体的に自分をアピールする機会が多いです。
- 早期選考
- 通常、出願から合格発表までが早く、早期に進路が決まることが多いです。
必要書類
総合型選抜(AO入試)に出願する際に必要な主な書類は以下の通りです。
- エントリーシート
- 自己紹介や志望理由、将来の目標などを記載する書類です。自分の強みや特徴をアピールすることが求められます。
- 志望理由書
- 志望する大学や学部への意欲、学びたい内容、将来の目標について具体的に記載します。
- 自己推薦書
- 自分の特技や経験、活動実績をアピールする書類です。自己分析をもとに、自分の魅力を具体的に伝えることが重要です。
- 調査書
- 高校での成績表や生活状況を記載した書類です。内申点や出席状況、課外活動の実績などが含まれます。
- 成績証明書
- 高校での学業成績を証明する書類です。
評価方法
総合型選抜(AO入試)では、以下のような評価方法が一般的に用いられます。
- 書類審査
- 提出されたエントリーシート、志望理由書、自己推薦書、調査書、成績証明書などの書類を基に、学業成績や人物評価を行います。
- 面接
- 面接では、志望理由や将来の目標について質問されます。また、自己PRや高校生活での経験についても聞かれることがあります。
- 小論文
- 小論文の内容を基に、論理的思考力や表現力を評価します。テーマは大学ごとに異なりますが、自分の意見を明確に伝えることが求められます。
- プレゼンテーション
- 一部の大学では、自分の研究テーマや興味のある分野についてプレゼンテーションを行う場合があります。
- グループディスカッション
- グループディスカッションを通じて、協調性やリーダーシップ、コミュニケーション能力を評価する場合もあります。
メリットとデメリット
メリット
- 多様な能力を評価
- 学力試験だけでなく、個々の能力や適性、志望動機など多面的に評価されるため、幅広い学生が挑戦できます。
- 早期の進路決定
- 早い段階で進路が決まるため、残りの高校生活を有意義に過ごせます。
- 自己アピールの機会
- 自分の強みや将来の目標をアピールする機会が多く、自己分析を深めることができます。
デメリット
- 準備の負担
- 書類作成や面接、小論文など、多くの準備が必要です。早めに計画を立てる必要があります。
- 不確実性
- 評価基準が多様であるため、結果が予測しづらいことがあります。
- 合格後の変更が難しい
- 合格後に他の進路を選ぶことが難しい場合があります。
総合型選抜(AO入試)は、学力試験だけでは測れない学生の多様な能力や意欲を総合的に評価する入試方式です。保護者としては、子どもがAO入試を目指す場合、自己分析や書類作成、面接対策など、しっかりとサポートすることが重要です。

推薦入試は大学によって出願資格(内申点)、専願または併願可、など条件が異なります。早めに募集要項や大学のホームページをチェックするようにしましょう。
推薦入試に向けた準備
推薦入試に向けた準備について考えると、以下のようなことが重要です。
学業成績の維持と向上
- 成績の重要性: 推薦入試では学業成績が基準となることが多いので、高い成績を維持することが大切です。
- 内申点の意味: 高校の内申点は推薦書や調査書に影響します。教師との良好な関係を築き、適切な評価を得るよう努力しましょう。
2. 課外活動や特技の積極的な取り組み
- 個性のアピール: 学外活動や特技は推薦入試での評価に大きく影響します。リーダーシップやチームワークを発揮できる活動に参加し、成果を積極的にアピールしましょう。
3. 自己分析と志望動機の明確化
- 志望校との適合性: 自分の将来の進路や志望校とのマッチングを考え、志望動機を具体的に明確にしておくことが重要です。
- エントリーシートや志望理由書の準備: 自己分析を通じて、自分の強みや学びたいことを文章で表現する準備を進めましょう。
4. 書類作成と面接対策
- 書類の内容: 推薦書、エントリーシート、小論文などの書類作成は、自分の実績や志望理由を明確かつ具体的に記述することが求められます。
- 面接の準備: 面接では自己紹介や志望動機、過去の経験や将来の展望について深く語れるように準備し、自信を持って臨みましょう。
5. 学校の先生との相談とサポート
- 推薦の取り組み: 担任の先生のや進路指導の先生と積極的に相談し、推薦入試に向けた準備を進めることが大切です。
- 学校のサポート: 学校側の推薦入試のポリシーや過去の事例を把握し、対策を立てる際に活用しましょう。
推薦入試は学力だけでなく、個性や意欲を評価する機会でもあります。自分の強みを十分にアピールし、準備をしっかりと整えて臨みましょう。
私は、新卒から約20年大手大学受験予備校の職員として働いておりました。現役生や浪人生、国公立医学部を受験する生徒から私立文系を受験する生徒まで、数千名の生徒と向き合ってきました。受験校の相談や学習方法の相談、受験勉強の息抜きなどさまざまな相談、時には生徒から教えてもらうことも。今までの経験を少しでも受験生に役立つ情報をお届けできたらと思っています。
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