大学志望理由書の書き出し方を解説|印象を決める最初の一文の作り方と例文
大学入試における志望理由書は、あなたの「人柄」や「将来の方向性」を伝える大切な書類です。
その中でも、最初の数行──つまり書き出しは、審査員が最初に目を通す部分であり、印象を大きく左右します。
どれほど熱意があっても、「出だし」で興味を持たれなければ読まれにくくなります。
逆に、冒頭の一文が魅力的であれば「この学生の文章を読みたい」と思わせることができるのです。
しかし、多くの受験生が悩むのがこの部分。
「どんなふうに始めればいいのか分からない」
「“昔から好きでした”以外の言い方が思いつかない」
そんな悩みを持つ方のために、本記事では書き出しの作り方と具体的な例文をタイプ別に紹介します。
さらに、NGワードや大学のアドミッションポリシーの活用法も合わせて解説し、より説得力のある志望理由書づくりをサポートします。
書き出しの前に確認すべき3つの準備
① アドミッションポリシーを理解する
大学はそれぞれ、どんな学生を求めているかを明確に示す「アドミッションポリシー(入学者受け入れ方針)」を公表しています。
これは志望理由書の“方向性”を決める地図のような存在です。
たとえば、「主体的に学び行動する人」「地域社会に貢献する人」など、大学によって重視する人物像は異なります。
書き出しでその姿勢を表すことができれば、大学との相性を強く印象づけられます。
👉 詳しくは関連記事:
➡️ アドミッションポリシーを踏まえた志望理由書の書き方〖例文つき〗
で、大学の方針を文章に反映させる具体例を紹介しています。
② NGワードを避ける
志望理由書の書き出しでは、以下のような表現を多用すると印象が弱くなります。
- 「昔から〜が好きでした」
- 「なんとなく興味があります」
- 「貴学の雰囲気に惹かれました」
これらはどれも抽象的で、根拠が伝わらない表現です。
「好き」「興味」ではなく、「なぜそう感じたか」「どんな経験がきっかけだったか」を明確にすることが重要です。
👉 関連記事:
➡️ 総合型選抜【志望理由書】NGワードと(例文あり)
では、避けるべき表現と具体的な改善例を解説しています。
③ 自分の経験・価値観を整理する
書き出しで強い印象を与えるには、自分の体験を言語化することが大切です。
部活動、ボランティア、授業、家庭での出来事など、あなたが「心を動かされた瞬間」から導き出せるテーマを探してみましょう。
印象を決める書き出しの3原則

- 具体性:出来事・行動・感情を交えて書く
- 独自性:あなたにしかない体験を出す
- 接続性:大学の教育理念や方針につなげる
たとえば「高校時代に地域の介護施設でボランティアをしたことをきっかけに…」という一文なら、体験と動機の両方が伝わります。
タイプ別・書き出し例文集
① 体験から始めるタイプ(定番で強い)
高校で地域清掃活動に参加したことをきっかけに、環境保全について深く考えるようになりました。将来は地域と協力して持続可能な社会づくりに貢献したいと考えています。
ポイント: 行動→学び→目標の順に展開することで、自然な流れが生まれます。
② 問題意識から始めるタイプ(社会系・理系向け)
地元の医療格差の現実を知り、「誰もが平等に医療を受けられる社会」を作りたいという思いが芽生えました。
ポイント: 社会課題をきっかけにすれば、目的意識の高さを示せます。
③ 大学の理念に共感するタイプ(大学研究型)
貴学の「地域に根ざした教育」という理念に共感し、実践的な学びを通じて地元に貢献したいと考えています。
ポイント: 大学名や理念を具体的に出すことで、本気度が伝わります。
④ 将来の夢から始めるタイプ(明確な目標型)
将来は発達障害を持つ子どもたちの支援に携わりたいと考えています。そのために、心理学と教育学の両面から子どもを理解する力を身につけたいと思っています。
ポイント: 「夢→理由→大学とのつながり」の流れで、目的と方向性を明確に。
NGな書き出しと改善例

| NG例 | 理由 | 改善例 |
|---|---|---|
| 小さいころから音楽が好きでした | 抽象的で根拠が薄い | 学校行事での合唱を通して、音楽が人をつなぐ力を実感しました。 |
| なんとなく経済に興味があります | 具体性がない | 家計管理を任された経験から、経済が生活に密接していることを感じました。 |
| 貴学の雰囲気に惹かれました | 説得力がない | オープンキャンパスで学生が主体的に発表している姿に感銘を受けました。 |
👉 詳しくは:
➡️ 総合型選抜【志望理由書】NGワードと(例文あり)
で、NG表現と修正文の具体例を確認してみましょう。
書き出し以降の文章構成テンプレート
志望理由書は「一貫性」が命です。
書き出しだけで終わらせず、後半まで自然に展開できる構成を意識しましょう。
おすすめ構成:
- 【書き出し】興味を持ったきっかけ
- 【展開】なぜその分野を学びたいのか
- 【具体】大学の特色・学びとの接点
- 【結論】将来の目標・社会への貢献
書き出し練習用テンプレート
以下の型を使えば、スムーズに書き出しが作れます。
【きっかけ】+【学びたい理由】+【大学を選んだ理由】
例文:
高校でのボランティア活動を通して、医療現場で人を支える仕事に興味を持ちました。
貴学の「チーム医療教育」に魅力を感じ、専門知識を身につけたいと考えています。
このテンプレートをもとに、自分のエピソードや大学の特色を入れ替えるだけで、説得力のある冒頭文が完成します。
まとめ|「最初の一文」で“あなたらしさ”を伝える
志望理由書の書き出しは、単なる導入文ではありません。
それは、あなたがどんな人で、何を大切にしているかを伝える第一声です。
- 抽象的な言葉ではなく、具体的な行動・体験から始める
- NGワードを避けて、自分の考えを軸に書く
- 大学のアドミッションポリシーを意識して、方向性を一致させる
この3つを意識するだけで、文章の印象は劇的に変わります。
私は、新卒から約20年大手大学受験予備校の職員として働いておりました。現役生や浪人生、国公立医学部を受験する生徒から私立文系を受験する生徒まで、数千名の生徒と向き合ってきました。受験校の相談や学習方法の相談、受験勉強の息抜きなどさまざまな相談、時には生徒から教えてもらうことも。今までの経験を少しでも受験生に役立つ情報をお届けできたらと思っています。



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